2011-03-02

Kiso Acoustic HB-01 を聞いた

2011-02-17 (Thu)、日本のガレージ・メーカー Kiso Acoustic のスピーカー HB-01 を先日、オーディオ・ショップで聞いてきた。店は新潟の For Music Company (新潟で唯一 Kiso Acoustic の取扱いをしている)。その日は、用事があったので 30 分ほどしか試聴が出来なかったけれど、大まかなイメージは掴めたので感想を書いてみる。

Kiso Acoustic HB-01

Kiso Acoustic は、2009 年頃にお目見えした新進のスピーカー・メーカー。その初号機 HB-01 は、発売当初からオーディオ雑誌に取り上げられ、非常に高い評価を得ている。けれど販売店の数が少なく、実物の音を聞くことが難しい。今回、新潟にプチ帰省したところ、For Music Company が取扱店であることを知ったのでお店にお邪魔した。

HB-01 はブックシェルフ型スピーカー。サイズは 313H x 148W x 224D (mm)。重さは 4.5 kg。意外と小さい。ちなみに、ぼくが昔使っていたブックシェルフ型スピーカー QUAD 11Lは 330H x 190W x 265D (mm)。一回り小さいと言ったところか? 一方、値段は一回り以上も違う。QUAD 11L が 10 万円なのに対して、HB-01 は約 150 万円とのこと。

HB-01 の特徴は、スピーカーを「楽器の様に」鳴らすこと。そのため、中に吸音材を一切使っていない (スピーカー製作には高峰楽器製作所の協力を煽いでいる)。Kiso Acoustic 曰く、リスニング空間でまさに生演奏が奏でられているような豊かな音楽再現を求めているとのこと。これらの特徴って、ぼくが持っている Bösendorfer VC2 の開発思想にそっくり。Bösendorfer スピーカーはトールボーイ型だけど、中に吸音材を使わず、スピーカーを楽器の様に鳴らすタイプのスピーカー。

雑誌の評価が高いということと、自分の持ってるスピーカーと開発思想が似ているということで、一度は音を聞いてみたいスピーカーだと思っていた。

試聴システム

試聴時のオーディオ・システムは以下の通り。

試聴

アキュフェーズの試聴用 CD を聞かせてもらった。音量は、普段部屋でオーディオを鳴らす時と同じくらい。つまり、隣の部屋へ音洩れしない程度の小中音量。

まず、音がとても自然なことに驚かされた。ハイエンド・オーディオ的な音じゃなくって、演奏者がそこに居るかの様な自然な再生音。音場は後ろに広く展開され、音像定位は完璧から一つ退いた感じだけれども全くブレない。分解能が高く、演奏者がどこにいるのかが良く分かる。モニター・スピーカーの様な一つ一つの「音」を追うスピーカーではなくって、「音楽」を楽しむスピーカーだと感じた。

リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」で最初にかかるオルガンの音を聞く。低音がビリビリと来るところだけれど、HB-01 では「ビリビリ」までは来なかった。音が鳴っているのは分かったけれど。

モーツァルトのホルン協奏曲第 1 番は、オーケストラのスケール感、ソロのホルンのニュアンスともに素晴らしかった。スピード感があり、音楽が生き生きとしている。

Side by Side」から採られた「セント・トーマス」では、ピアノのタッチや沈み込む感じの低音を聞くことが出来たし、ベースの音もスピード感・アタック感があって良かった。

総評: ブックシェルフ型の宿命と言うべきか、床をビリビリさせる程の低音の量感は出ない。その代わり、ブックシェルフ型が得意とするスピード感は音楽を楽しくさせてくれる。スケール感の大きさも出色。何より「音楽」を楽しく聞くことの出来るスピーカーだと思った。

試聴を終えて

試聴後、店員さんと少し話をした。以前、この店で聞いた Sonus faber の GUARNERI Memento (定価 175 万円のブックシェルフ型スピーカー) と比べて HB-01 はどうか? という質問。店員さん曰く、「GUARNERI は小さな音でも素晴らしい再生音がする。一方、HB-01 は音量を大きくしてあげないと真価を発揮しない。(ぼくが聞いてた音量より) もっと大きな音で聞くと、もっと凄いですよ」。

つまり、せっかく試聴する機会があったにもかかわらず、ぼくは HB-01 の「本当に良い音」を聞かずに試聴を終えたことになる。それでも十分に良質なスピーカーだと思ったけど、この上があると思うと空恐しい。

ただ、そこまで音量が必要となるとアパート住まいに持ち込むには厳しい。オーディオ・ルームをちゃんと持っている人が、音楽を楽しむための、上級向けブックシェルフ・スピーカーなのかもしれない。

蛇足: For Music Company について

For Music Company は新潟の老舗のオーディオ・ショップで、最初は「関本無線」と名乗っていた。その後、名称変更。2009 年にこの店を訪ねた時、Google Maps には「オーディオ関本」という名前で登録されていた。当時、ウェブ・ページを見た時、既に「For Music Company」という名称があったので、おそらく「オーディオ関本」という名称も一時期使っていただけなのかもしれない。

2009 年度の訪問記は過去エントリーをどうぞ。

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